2023年4月6日木曜日 更新:

色収差付きレンズと上手に付き合う方法

色収差(いろしゅうさ)とは、被写体の輪郭などに現れる色にじみや色ずれの事で、主に特殊分散ガラス(以下、EDガラス)を使用されていないオールドレンズで起きやすい現象です。

実際の写真

百聞は一見に如かずで、まずはこちらの写真を御覧ください。

OM-D E-M1 + ZUIKO 135mm F3.5

この写真の木の枝葉の至るところに紫色の縁取りが出来ています。これが色収差という現象で、被写体が照明や太陽光に向かっているときに、開放絞りで撮影すると簡単に発生します。
 
色収差の種類は2つあります。
  • 軸上色収差(縦色収差):ピント位置が波長によってズレる現象。前ボケ・後ボケが異なる色になる。開放絞りで顕著。
  • 倍率色収差(横色収差):画面周辺部で色がにじむ現象。絞っても残りやすい。 

 


色収差の主な原因

光は、RGB(赤、緑、青)で構成されていて、それぞれの波長が異なる特徴を持つ。 レンズに入射した光は異なる角度で屈折してしまうため、光が分散して色収差の原因となる。そこで、各レンズメーカーは、色消しレンズや特殊分散ガラスといった低分散特性を持つレンズを複数配置して色収差を補正するようになりました。この技術の高精度化が進んだのがデジタル時代になってから。そのため、オールドレンズには色収差が大きく出るものが多い。
 
 

大口径レンズの偽色

F1.2〜F2の大口径レンズを開放絞りで使用すると、背景が美しくボケる一方で、被写体の輪郭に色づきが生じることがあります。代表的なものがパープルフリンジとグリーンフリンジです。
 
  • パープルフリンジ:主に軸上色収差が原因です。波長によってレンズの焦点距離がわずかに異なるため、青〜紫の波長成分がピント面からズレて像の輪郭に滲み出ます。逆光や強い光源に向けた撮影で顕著に現れます。
  • グリーンフリンジ:パープルフリンジとは発生メカニズムが異なり、ボケ部分の輪郭(特に明るい背景と暗い前景の境界)に緑の縁取りとして現れます。レンズの光学設計やコーティング特性によって出方が変わり、機種依存が強い現象です。
 
 

対策1:ARコート 

2013年頃から、撮像センサー前面のシールガラスに広帯域の反射防止コート(ARコート)を施した機種が登場しました。従来のレンズ用マルチコートも反射防止の一種ですが、帯域幅と抑制効率には限界がありました。センサー面のARコートはより広い波長域をカバーし、センサーからレンズへ反射して戻る光(二次反射)を大幅に低減します。これにより、コーティングが少ないオールドレンズを使用した際に生じがちなゴーストやフレアが抑えられ、フリンジを目立ちにくくする効果があります。 
 
主なARコート付きカメラ
  • α7Rシリーズ/α7Sシリーズ/α9シリーズ
  • OM-D E-M1 Mark II/III/E-M1X/OM-1
  • G9Pro/GH5S/GH5M2
  • S1/S1H/S5/S5II 

 

対策2:修理、清掃する

レンズが黄変していたり、カビやクモリなどがある場合は一目瞭然ですが、レンズを購入した後に無限遠が合わない、または絞りリングに異音がある場合は、レンズの組み立て不良が考えられ、色収差の問題を引き起こす可能性があります。度を越した色収差が発生する場合は、レンズメーカーや信頼のおける修理業者に点検を依頼すれば、色収差を軽減できる可能性があります。
 
 

対策4:テレコンを装着する

オリンパスの「TCON-17X」を装着すると、パープルフリンジを大幅に抑制する効果があります。レンズテストでは、パープルフリンジからグリーンフリンジへ色が置き換わるのを確認できました。グリーンフリンジは、RAW現像ソフトでも比較的除去しやすく、風景写真では目立ちにくくなります。また、色味によっては作風として活かせる場合もあります。 

 

TCON-17X装着前

TCON-17X装着後

時雨
OM-D E-M1 + ZUIKO 135mm F3.5 + TCON-17X


対策5:撮影時に工夫する 

ARコート無しのデジタルカメラとモノコートのオールドレンズで、晴天時に綺麗に撮りたいときはどうするか。
  • 絞りを絞る:軸上色収差は絞るほど改善します。F2.8〜F4程度でパープルフリンジが大幅に減る場合があります
  • 露出を適正に抑える:ハイライトの白飛びがフリンジを強調するため、露出オーバーを避けます
  • 光源の向きや立ち位置を変える:強い逆光を正面から受けないよう、ハレ切りや立ち位置変更が効果的です
  • 被写体と背景の輝度差を下げる:補助光(LEDやフラッシュ)で影の部分を持ち上げ、コントラストを緩和することでフリンジが目立ちにくくなります(屋外ポートレート等に有効)

 

 

対策6:撮影後に工夫する 

DxO PureRAWの倍率色収差補正や、Affinityの軸上色収差補正など、RAW現像段階での補正が最も確実ですが、ビンテージ映像の制作に使用するという方法もあります。現代のイラストや映像の世界では、逆に色収差加工が流行っているそうです。また、私も写真を始める前は、太陽入りの写真はゴーストが入るのが当たり前だと思っていました。
そういった写真や映像を撮りたいときに、モノコートのオールドレンズは相性ぴったりです。1970年代製造のレンズ(G.ZUIKO 50mm F1.4やG.ZUIKO 28mm F3.5)であれば、画像に虹が出ることもあります。また、オールドレンズの味を強調するという意味で、「RGB調整」やアートフィルターの「ビンテージ」は有効かもしれません。

OM-D E-M1 + ZUIKO 28mm F3.5

E-M1 + ZUIKO AUTO-T 135mm F3.5
OM-D E-M1 + ZUIKO 135mm F3.5
アートフィルター「ビンテージ」

 

懐かしい雰囲気の写真や映像を再現するために使用したり、工夫次第で最新型のレンズに匹敵する写りにすることもできる。これがオールドレンズによる撮影の面白さだと思います。そして、フォーカスピーキングやレンズ名登録などMF撮影の支援機能があるミラーレス一眼カメラは、オールドレンズの撮影をより豊かにしてくれるでしょう。 


参考文献


更新履歴
  • 2015年4月18日、色収差付きレンズと上手に付き合う方法の記事公開。 
  • 2023年4月6日、以下の情報が古くなったので履歴に移動しました。
  • 色収差のある写真の修正は、色収差補正アプリが必要になります。最初に試したのはアドビの「Lightroom 5」で、「色収差を除去」を実行後、残った箇所を「フリンジ軽減」でスポイトでちくちく修正して、完全に消し去ることができました。おそるべしLightroom(修正した画像
  • Capture NX2シリーズとDarktableを試しましたが、ZUIKO AUTO-T 135mm F3.5の色収差を完全に消し去ることはできません。Darkableは、E-M5 Mark II 正式対応を謳っているので今後に期待です。
  • 無料アプリの中ではGIMPのプラグイン「Purple Fringe Fix」(配布終了)が最も除去率が高いです。以下、ZUIKO 135mm F3.5の色収差を一発で除去できる魔法の設定です。*GIMP2.8.14のRAWファイル(ORF)の読み込みは画像が壊れてしまうので現時点ではJPEG限定です。





  • ZUIKO 135mm専用のお勧め設定は上から10, 1, −100, −100, -100, -100, Flatten Image: ON。Jpegに保存はFile/Save for Webです


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