(mode-1)片持ちフォーク式ナノトラッカー |
(mode-2)簡易ドイツ式ナノトラッカー |
軽量のマイクロフォーサーズのカメラは、ナノトラッカーやポラリエといった星景写真用の小型のポータブル赤道儀との相性がよい。この構成に簡易的でも片持ちフォーク式やドイツ式赤道儀の仕組みを導入できれば、赤緯・赤経を意識した星雲・星団の位置合わせやギアのバックラッシュの悪影響を低減できるメリットがあります。
用意したもの
すべてアルカスイス互換の汎用品で揃えました。SUNWAYFOTO、Leofoto、MENGSは造りが良くて気に入ってます。総額1.5万円ほどのアップグレードキットで、これらの部品はそのままTP-2やSWATの強化パーツとして用途を変えて使うことができます。
部位
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部品リスト
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フォーク部
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バランスウェイト部
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クランプ部
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使用しているパンニングクランプは旧型のもので、新型は15°間隔のクリック強弱が調整できるダイヤル付きに進化しています。旧型は定価の半額で購入できました。
フォーク部
汎用のL型クイックリリースプレートは様々な種類がありますが、 特に水平・垂直の両方に1/4インチのネジ穴があるタイプが重宝します。カメラの取付側はパンニング目盛付の自由雲台を採用していますが、より赤緯を合わせやすいようにパンニングクランプにしてもOKです。ただし、パンニングクランプは取付面を工夫する必要があります。詳しくは後述のクランプ部で説明します。
汎用L型クイックリリース | Amazon |
バランスウェイト部
マイクロフォーサーズの軽量なスタンダードの超望遠レンズをメインとし、PROレンズをウェイトとして利用する使い方を想定しています。レンズリアキャップはLUMIX Gレンズ用の厚みのある旧型タイプ。電動ドリルでM6の穴を開けてLeofotoの万能アームと繋ぎました。
少しだけ取り扱いに気を使うので、レンズの代わりにスマートフォンホルダーを付けてバッテリーを載せたり、テレスコ工作工房の「ペットボトルアダプター」というアイデアもありますね。カメラ側の総質量が1kgを超える場合は、耐荷重のある赤道儀に切り替えます。
Leofoto MAGIC ARM AM-2 | Amazon |
クランプ部
ここが頭が禿るほど悩みました。ナノトラッカーの回転ステージのネジは時計回りなので、東側に軽く力を加えただけで簡単にパンニングクランプが緩んでしまいます。
Leofoto PAN-02(またはMENGS製、直径60mm)| Amazon |
購入したパンニングクランプの裏面は、扇型で深さ2mmの穴が4つあり、ナノトラッカーの回転ステージと接触する面が少ないために簡単に回ってしまうようでした。そこで、穴に紙を押し付けて型を作り、扇形にカットした2mm厚のゴムシートを両面テープで貼り付けたところ・・
+ |
力一杯締めて取り付ければ、ゴムが回転ステージに密着して簡単には緩まなくなった。ナノトラッカーの後継機(上位機?)が出るのであれば、パンニングクランプに交換できると嬉しい。
(補足)市販の天体望遠鏡用オプション品
TP-2には、ユニテックの「シンプルフォークユニット2」と「バランスウェイト・シャフトセット」を導入。こちらもアルカスイス互換のプレートを取り付けることで、片持ちフォーク式とドイツ式兼用タイプにできました。
メーカー
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製品名
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純正オプション品
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赤道儀式架台
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プレート規格
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ケンコー
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スカイメモS/T
| アリガタプレートⅡ バランスウェイト |
ドイツ式
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ビクセン規格
(幅:44mm
テーパ角度75°)
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ビクセン
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ポラリエ
| マルチ雲台ベース スライド雲台プレートDD APフォトガイダー用ウェイト軸 |
ドイツ式
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ビクセン規格
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ユニテック
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SWAT
| ドイツ式赤緯セット |
ドイツ式
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ビクセン規格
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シンプルフォークユニット2 バランスウェイト・シャフトセット |
片持ちフォーク式
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アルカスイス互換
ネジ穴:M6
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トミーテック
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BORG
| 片持ちフォーク式赤道儀 |
片持ちフォーク式
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BORG規格
(アルカスイス変換アダプター有)
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実際に片持ちフォーク式で撮影してみると・・
ギアのバックラッシュの悪影響を回避できる→星像が良くなり歩留まりが上がる→表現できる幅が広がる。TP-2でベランダから建物に隠れる直前のM42の撮影に成功。以前は星が流れていた位置だが、バランスが良くなったのか星が流れにくくなった。
赤緯・赤経を意識した位置合わせは、導入時間を短縮できるメリットとテレコンの後付が可能となった。しかし、長焦点になればなるほど位置合わせ、バランス・ピント調整などがミリ単位に変わり難易度が増す。
ベランダからのM42: 片持ちフォーク式TP-2(バランスウェイト付き) + E-M1MarkII + M.ZUIKO 40-150mm F2.8 PRO + MC-14 + TCON-17X |
片持ちフォーク式ナノトラッカーのテスト日は、風が強くバランスウェイトにレンズを使うことが心配になり結局ペットボトルに。TP-2との性能差を確認するために土台はTP-2と同じものとした。カメラはOM-D E-M5 + LUMIX G 45-175mm + TCON-17Xで総重量は約1kg。(これはちょっと悪手だったかも)
露出50秒、8回の撮影で星を点で写せたのは3枚。タイマー12sでシャッターによる振動の影響は限りなく少なくした。バランスウェイトは429g→212g→0gと変更していきL型クイックリリースプレートのクランプ位置は東寄りから西側にシフトして、最後は中央に変更。バランスウェイトを減らした後半の方が星像が安定した印象だが、7枚目がまさにギアのバックラッシュの影響だろうか。
OM-D E-M5 + LUMIX G 45-175mm + TCON-17X at 175mm F8 50s ISO3200 |
一方、この夜のTP-2は無敵状態となり、オリオン大星雲の撮影は2枚で終了。お手本通りの比較明合成を作成してみました。F8がピークというMFTレンズの中で貴重な存在のLUMIX G 45-175mm F4-5.6は、M42の撮影にぴったりのレンズのようだ。色収差を消す魔法のテレコンTCON-17Xを組み合わせると、焦点距離は297.5mmとなる。
LUMIX G 45-175mm F4-5.6 | Amazon |
1年後。
初心者向けのナノトラッカーなのに、上記はお金を掛けすぎました。もっとシンプルであるべきです。片持ちフォークは、常に西側に設置すればよいことに気付きました。採用したパノラマ雲台は格安品ですが、アルミニウム合金の削り出しで剛性は十分です。
- パノラマ雲台 | Amazon
- SUNWAYFOTO DPL-03R | Amazon
カメラ搭載イメージ |
ChatGPTにM42定番フィルターを聞いてみた(23/2/19)
- M42を撮影するための定番フィルターを教えてください
- 「M42を撮影する際には、以下のようなフィルターが定番とされています。
- Ha (水素アルファ) フィルター:星雲の赤色発光を強調し、高コントラストな画像を得ることができます。
- OIII (酸素3) フィルター:星雲の青緑色発光を強調し、高コントラストな画像を得ることができます。
- SII (硫黄2) フィルター:星雲の赤色発光を強調し、Haフィルターとの組み合わせで高コントラストな画像を得ることができます。
- L (Luminance) フィルター:全体の明るさを補正し、高解像度な画像を得ることができます。
これらのフィルターを組み合わせることで、より美しいM42の画像を得ることができます。ただし、これらのフィルターはそれぞれ高価であるため、初心者にはあまりおすすめできません。まずは、Lフィルターのみで撮影を行い、後から画像処理を行うことをおすすめします。
Lフィルターというと、主に夜間の都市部や街灯の多い場所での天体写真撮影に用いられる「光害防止フィルター」を指すことが多いです。
代表的なLフィルターとしては、以下のようなものがあります。
- Astronomik L-1 Luminance Filter
- IDAS LPS-V4 Light Pollution Suppression Filter
- Hoya Starscape Light Pollution Cut Filter
- Baader Planetarium LRGBC CCD Filter Set with L-Filter
各メーカーから出ている製品がありますが、特にAstronomikやIDASなどが有名なメーカーです。使用するカメラのサイズに合わせたものを選ぶ必要があります。また、フィルターの品質によって、写真に現れる星の色が変化する場合があるので、自分の好みに合わせて選ぶと良いでしょう」
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