2024年7月5日金曜日 更新:

天体撮影用カメラ「E-M1 Mark III ASTRO」のカスタム設定詳細

2024年7月、OM SYSTEMより天体撮影用カメラ「E-M1 Mark III ASTRO」が発表されました。製品紹介ページには様々な天体写真が公開されましたが、その中の1枚の写真に私はとても驚きました。

バーナードループ作例

そう、ノーマルの作例の方に。。。。

OM SYSTEM

 

6年前に馬頭星雲を狙って挫折しました。Quad BPフィルターが必要なのかと思っていたが、今回の作例を見る限り、光害カットフィルターが絶対に必要という訳ではなさそうだ。

 

設定のヒント

作例には以下の情報が記載されています。

  • E-M1 MarkIIIで撮影
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
  • 60秒 F2.8 ISO3200
  • 手持ちハイレゾショット、1枚撮り
  • 赤道儀使用
  • ソフトウェアで画像処理をしています

三脚+手持ちハイレゾショットで60秒/16ショット = 1枚約3.75秒 で撮影したということか。しかも光害カットフィルターなしです。


500/600ルールで検証

M.75mm F1.8で撮影していることにもビックリです。そんなに短い焦点距離でいいんだ。。。500/600ルールで計算すると、露出約3〜4秒まで星を点で撮れる。
  • 500/75x2= 約3.33秒
  • 600/75x2= 約4秒

我が家ではM.40-150mm F2.8で撮ることになるので、テレ端の焦点距離も計算してみました。この場合、約1〜2秒と。✍️

  • 500/150x2= 約1.66秒
  • 600/150x2= 約2秒

 

Uploadfilterさんの作品

海外のOlympusフォーラムに馬頭星雲の写真が掲載されていたので設定を調べてみる。

炎と馬頭星雲 II

  • Olympus PEN E-PL8
  • Samyang 135mm F2.0 ED UMC
  • Vixen ポラリエ スタートラッカー
  • 3時間x540ショット ISO100 F2.4

長い悪天候が続いた後、2 月の最後の 2 日間に再び炎と馬頭星雲を撮影することができ、2020 年 12 月の 91 分の露出時間に 89 分の露出時間が追加されました。Sequator で画像をスタックし、Photoshop と StarNet で処理しました」(2022、Uploadfilter)


500/600ルールによると、135mmは約1〜2秒の露出時間までは確実に点で撮れる。赤道儀は長時間構図を維持するためだけで極軸精度はあまり求められていなかった事になる。絞りF2.4〜2.8で撮ることの方が大事なのか。
  • 180分/540枚 = 0.33秒
  • 500/135x2= 約1.85秒
  • 600/135x2= 約2.22秒

 

昔の写真」を見ると、297.5mm 30s ISO3200 F8とあり、LUMIX 45-175mm にTCON-17を付けるとちょうど297.5mmとなる。そうか、撮影に使ったレンズでは暗すぎたのか!

  • 500/297.5x2= 約0.84秒
  • 600/297.5x2= 約1秒 

35mm換算600mmの世界を絞って長秒露出してたんだ。。。。 違う努力をがんばっていたんだねぇ( ;∀;)とほほ

 

飯島裕氏の作例

  • 【PLAZAトーク】飯島裕流「新製品E-M1 Mark III ASTRO での星景写真撮影テクニック~作品作りまで」(8/12、OM SYSTEM

 

8/12、付属の光害カットフィルターの透過率が紹介されました。これをよしみカメラさんの紹介記事と重ねてみると、Ha強調フィルターでもあるAstroマルチスペクトラ相当のフィルターということになる。本当だとするとこれは買いかも。

BMF-LPC01の透過率


よしみカメラ


OM SYSTEM

 

飯島裕氏の馬頭星雲の作品紹介もありました。レンズ名はF2.8の誤りです。F3.5、60秒、ISO6400、手持ちハイレゾショットx2、光害カットフィルター、赤道儀追尾とあります。

60秒/16 = 3.75秒で撮ったのでしょうか。

OM SYSTEM

 

 

カスタム[C1][C2]設定

取扱説明書」のカスタム[C1][C2]を書き起こしてみました。[C1]のシャッター速度は注意点があり、手持ちハイレゾショットを想定したもの。実際は30秒/16≒2秒だとするとM.40-150mm F2.8。[C2]の4秒はM.75mm F1.8の使用を想定したものか。
  • 記録画質モード:[C1] 50M+RAW、[C2] LSF+RAW
  • 撮影モード:M
  • 絞り:[C1] F2、[C2] F1.2
  • シャッター速度:[C1] 2秒、[C2] 4秒
  • ISO感度:[C1] 1600、[C2] 6400
  • AF方式:星空AF 精度優先
  • AF + MF:On
  • ドライブ:[C1] 手持ちハイレゾショット、[C2]低振動モード
  • 撮影待機時間:[C1] 4秒、[C2] 1秒
  • 手ぶれ補正:Off(※説明書はS-IS AUTOだが、Offが良い)
  • LVブースト:On2
  • モニター調整:輝度-7
  • ガイド線表示色:R200/G0/B0/α60
  • 露出補正ボタン:拡大表示
  • 録画ボタン:LVブースト切り替え
  • ISOボタン:フォーカスリングロック
  • ホワイトバランス:3000K
  • ホワイトバランス補正:G方向 +2
  • ハイライト&シャドウコントロール:ハイライト +3 / 中間 -3 / シャドウ 0
  • シャープネス:−2
  • コントラスト:+2

 

AI天体写真アプリ

6年振りに天体写真アプリについて色々と調べてみると、AIの登場によって勢力図が様変わりしていました。夜空と天体のわずかな光量の差を強調するために、スタッキング、ストレッチ、ノイズリダクション、光害かぶり除去などの技術が駆使されています。

  1. メイン
  2. ノイズリダクション
    • DeNoiseAI(有償、対応OS: Windows、Mac)
  3. 光害かぶり除去
    • GraXpert(無料、対応OS:Windows、Mac、Linux)

 

ここでようやくE-M1 Mark III ASTROの価値が分かったような気がします。例えば当時、馬頭星雲の正しい撮影方法に辿り着いたとする。そして、夜な夜な何時間もかけて撮影とストレッチ現像を繰り返して下図左の写真を完成できていたとしましょう。それでもきっと、今回のこの60秒という露出時間を見て、衝撃を受けたに違いありません。

OM SYSTEM



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