2023年6月23日金曜日

赤外線カメラ「OM-D E-M1X_IR」の仕様

OMDSは、法人・個人事業主向けの調査・研究目的として赤外線カメラ「OM-D E-M1X_IR」の受注販売を開始しました。(6/15)

IRシステムの概要


  • OM デジタルソリューションズ株式会社(代表取締役社長 兼 CEO:杉本 繁実)は、赤外線を使った調査、研究に最適なデジタルアーカイブ向け IR カメラ「IR システム(Infrared rays Record&Research System)」を 2023 年6月 15 日から 日本国内の法人・個人事業主のお客さま向けに OMDS Business Storeで受注開始いたします
  • 今回発売する「IR システム」は、小型軽量で高画質の OM SYSTEM のミラーレス一眼カメラ 「OM-D E-M1 Mark III」と「OM-D E-M1X」 の受光感度を赤外線領域まで拡大させ、大掛かりな機材では難しい場所での調査・撮影に最適な、フットワークの良い赤外線カメラです。付属のマグネット着脱式フィルターキットを用いることで赤外線撮影と通常撮影(可視光線撮影)の切り替えを簡単に行うことができます。また、ワークフローを解説したユーザーズガイドを付属し、赤外線を使った調査、研究を強力にサポートするコストパフォーマンスに優れたカメラシステムです」(2023/6、ニュースリリース

 

製品名:

  1. OM-D E-M1X_IRボディ:通常価格 32万2,422円(税込)
  2. OM-D E-M1X_IR  + 12-45mm F4.0 PRO レンズキット:通常価格 35万4,444円(税込)
  3. OM-D E-M1 Mark lll_IR + 12-40mm F2.8 PRO レンズキット:通常価格 42万2,644円(税込)

 

 

マグネティックIRフィルターキット(同梱)

すべての製品に、香港のフィルター専業メーカーであるH&Y製のマグネティックIRフィルターが付属します。各フィルターは、ARコートおよびナノコーティングが施されています。

  • UV/IR CUTフィルター
  • IRフィルター
  • 本体側アダプター
  • 通常価格 3万3,000円(税込)



 

IRシステムの特長

Olympusの通常モデルには、人間の目が認識できる波長の範囲(波長:380〜780nm)以外をカットするUV/IRカットフィルターを内蔵しています。このカメラ内のフィルターを光学用のクリアフィルターに換装した後に、通常撮影用のUV/IRカットフィルターと赤外線撮影用のIRフィルターをレンズ前面にある磁石式のアダプターを介して素早く切り替えられる。また、ハイレゾショットで高解像度の赤外線写真を記録できるのが本システムの特長です。


OM-D E-M1X_IRのように波長の全範囲をカバーできるカメラの事を、赤外線写真の世界では「フルスペクトル機」(full spectrum device)と呼びます。

「IRシステム」のUV/IRカットフィルターと、IRフィルターの透過特性は非公開となっています。

 


天体撮影専用モデルにもなる?

キヤノンは、「EOS R」のCMOSセンサーの前面に配置しているローパスフィルターをIRフィルターに換装した天体撮影専用モデル「EOS Ra」を2019年12月に発売しています。

「EOS Ra」の製品説明によると、Hα線(波長:656.28nm)の透過率を通常モデルの4倍に高めたフィルターとのことです。したがって、「EOS Ra」と同等の特性を持つIRフィルターを用意すれば、OM-D E-M1X_IRが天体撮影用モデルにもなります。

IRフィルターを充実させることで、美術品だけでなく、天体、医療、家電品修理の検査などにも活用できる「IRシステム」は大変魅力的に見えますが、残念なことに個人向けには販売されません。これは、すでに発売されている「PENTAX KP IR」と同じで、購入するためには、OMDSと使用条件等を規定した「購入条件確認書」を締結する必要があります。



OM-D E-M1X_A

となると、一般販売できる「OM-D E-M1X_A」の登場を期待してしまいますが、用途が天体撮影に限定されるというジレンマがあります。必要な人は、すでにハヤタ・カメララボさんなどでIR改造を依頼しているでしょうし。

個人的には、天体撮影専用に改造したあとに通常撮影ができなくなるのはちょっと困るなあと二の足を踏んでいました。しかし、富士フイルムの「CC-50C 色補正フィルター」を装着してホワイトバランスを調整すれば、日中の撮影も可能な程度のIRフィルターのようです。

ハヤタ・カメララボさんのサイトで公開されている各種フィルターの透過率グラフをまとめると、以下のようになります。

  • D5600のローパスフィルター
    • 420nm 90%
    • 450nm 95%
    • 480nm 98%
    • 550nm 90%
    • 650nm 20%
  • IR改造
    • 420-680nm 98%
    • 700-720nm 5%
  • クリア改造
    • 300nm 30%
    • 400-720nm 100%
    • 1000nm 75%



モアレは大丈夫?

そもそもローパスフィルターで物理的にモアレ対策をしているKissやD5600を、安易にIRフィルターに換装して大丈夫なのでしょうか。

こちらもハヤタ・カメララボさんのサイトで改造後に問題になる機種が公開されています。

  • 改造後動作異常
    • EOS R5C
  • クリア不可
    • EOS M5以降のEOS Mシリーズ
    • EOS Kiss Mシリーズ
  • ダーク処理が必要、ノイズ発生
    • EOS 6D Mark II
    • EOS 5D Mark IV
    • EOS 5Ds
    • EOS 5DsR
    • α7R II
    • α7S II
    • X-Eシリーズ

 

 

非改造 赤外線写真カメラの見分け方

ケンコー・トキナーに、以下の解説が公開されています。

  • 現在市販のほとんどのデジタルカメラはローパスフィルターで赤外線をカットしていますが、わずかに赤外線を透過しているため、Kenko「PRO1D R72」等の近赤外線透過フィルターを使用することで赤外線撮影が可能になります
  • わずかな赤外線を使用して撮影するため、長時間露光撮影となり、日中でも三脚が必須です。しかし長時間露光による効果も相まって、幻想的な世界を表現できます

 

所有する機材を使って、TVのリモコンをポチポチ押して確認したところ、E-M5以降のOlympus機は全て赤外線(波長:940nm)を撮影できました。一方、ローパスフィルターを内蔵しているGM1では撮影できませんでした。

つまり、Olympus機に内蔵されているUV/IRカットフィルターは、赤外線領域を100%カットしている訳ではなかった。赤外線の透過率が高い「IRシステム」と違い忍耐が必要だが、通常のOlympus機でもIRフィルターを装着して長秒撮影すれば、赤外線写真を撮影できるのです。

富士フイルムの「SCフィルター SC 72 7.5X7.5@Amazon」を購入して試したところ、Olympus機はスナップ的に撮影したあとに、RAW現像でスノー効果やカラースワップを体験できたのに対して、Panasonic GM1の手持ち撮影では、赤外線の反射を捉えられず、単純に濃厚な赤いフィルターを被せたような写真になりました。

青空が鮮やかに撮れるオリンパスブルーの秘密は、波長:590〜780nm領域のUV/IRカットフィルターの透過率が関係していたのだろうか。逆に、パナソニック機と同等の波長:780nm以上のIRをカットするフィルターをOlympus機に装着すると、パナソニック機に似た写真になるのでしょうか。



ゴースト・フレアは大丈夫?

PROレンズは波長450~650nmの反射率を従来の約半分、LEICAレンズでは波長380-780nmの全領域で光線の反射を飛躍的に低減するとしています。現代のレンズコーティングは、可視光線領域のみをカバーします。

赤外線写真を逆光で撮影すると、ゴーストやフレアは発生しやすくなるため、順光での撮影が基本となります。


試写

「IRシステム」を調べているうちに、赤外線写真の世界を知ることとなった。フルスペクトル機は未所有のままですが、まずは通常のOlympus機と定番のフィルターで撮影してみようとなりました。

HOYAの「52mm R72 Infrared Filter」(B&H)と迷いましたが、「Kenko カメラ用フィルター PRO1D R-72 52mm モノクロ撮影用」を注文しました。

しかし、、、

OM-1 M.17mm F1.8 at 1/40 F1.8 ISO1600 -1EV

フィルターが暗くてピント合わせが激ムズです。ちゃんと三脚を使って絞って撮るべきだったか。露出は、明暗がくっきりするようにやや暗めに補正して撮影しておくと、あとで現像するときに、より赤外線写真らしくなることが分かった。

波長についても色々試してみたくなり、中華製のR680nmを追加注文してみました。届いたらまた撮影してみます。