2023年4月6日木曜日 更新:

色収差付きレンズと上手に付き合う方法

色収差(いろしゅうさ)とは、被写体の輪郭などに現れる色にじみや色ずれの事で、主に特殊分散ガラス(以下、EDガラス)を使用されていないオールドレンズで起きやすい現象です。百聞は一見に如かずで、まずはこちらの写真を御覧ください。

OM-D E-M1 + ZUIKO 135mm F3.5


この写真の木の枝葉の至るところに紫色の縁取りが出来ています。これが色収差という現象で、被写体が照明や太陽光に向かっているときに、開放絞りで撮影すると簡単に発生します。


色収差の主な原因

光は、RGB(赤、緑、青)で構成されていて、それぞれの波長が異なる特徴を持つ。 レンズに入射した光は異なる角度で屈折してしまうため、光が分散して色収差の原因となる。そこで、各レンズメーカーは、色消しレンズや特殊分散ガラスといった低分散特性を持つレンズを複数配置して色収差を補正するようになりました。この技術が確立したのがデジタルカメラの時代になってから。そのため、オールドレンズには色収差が大きく出るものが多い。

2013年頃から、デジタルカメラの撮像センサー上にあるシールガラスに、反射防止膜(ARコート)を適用する製品が登場します。1980年代のマルチコートは、レンズ表面に薄い膜を塗布することで反射を減少させ、透過率を向上させる技術でした。一方、ARコートはより広範囲な波長範囲での反射を減少させ、高い透過率を提供します。光学的な性能だけでなく、耐久性や汚れの付着防止などの面でも優れています。これらのカメラを使用することで、純粋にオールドレンズの描写やボケ味を楽しめる時代になりました。
 
主なARコート付きカメラ
  • α7Rシリーズ/α7Sシリーズ/α9シリーズ
  • OM-D E-M1 Mark II/III/E-M1X/OM-1
  • G9Pro/GH5S/GH5M2
  • S1/S1H/S5/S5II 

 

 

大口径レンズの偽色

F1.2〜F2の大口径レンズを使用して開放絞りで撮影すると、被写界深度が浅く、背景がぼけた美しい表現を得ることができますが、光学的な副作用が生じることがあります。その1つが、パープルフリンジやグリーンフリンジと呼ばれる現象です。

大口径レンズの場合は、光がレンズに入射する際にレンズ内部で光が屈折し、波長によって屈折率が異なることで紫外線や青色の光が赤色や黄色の光よりも強く屈折します。このため、被写体の周囲の明るい部分で紫外線や青色の光が強くなると、周囲の色と混ざり合ってパープルやグリーンのフリンジが生じます。EDガラスやARコートは、光の屈折率の差を小さくし、フリンジを軽減することができます。しかし、現行のレンズでも完全に解消することはできません。

大口径レンズの偽色対策

  • 絞りを絞る
  • 露出を適正値にする
  • LEDライトやフラッシュなどの光源を使用する
  • 色収差補正アプリを使用する

 

 

レンズの組み立ての問題

レンズが黄変していたり、カビやクモリなどがある場合は一目瞭然ですが、レンズを購入した後に無限遠が合わない、または絞りリングに異音がある場合は、レンズの組み立て不良が考えられ、色収差の問題を引き起こす可能性があります。度を越した色収差が発生する場合は、レンズメーカーや信頼のおける修理業者に点検を依頼すれば、色収差を軽減できる可能性があります。


ビンテージ映像の制作に使用する

イラストや映像の世界では、逆に色収差加工が流行っているそうです。また、私も写真を始める前は、太陽入りの写真はゴーストが入るのが当たり前だと思っていました。
そういった写真や映像を撮りたいときに、モノコートのオールドレンズは相性ぴったりです。1970年代製造のレンズ(G.ZUIKO 50mm F1.4やG.ZUIKO 28mm F3.5)であれば、画像に虹が出ることもあります。また、オールドレンズの味を強調するという意味で、「RGB調整」やアートフィルターの「ビンテージ」は有効かもしれません。

OM-D E-M1 + ZUIKO 28mm F3.5

E-M1 + ZUIKO AUTO-T 135mm F3.5
OM-D E-M1 + ZUIKO 135mm F3.5
アートフィルター「ビンテージ」
 
 

撮影時に工夫する

ARコート無しのデジタルカメラとモノコートのオールドレンズで、晴天時に綺麗に撮りたいときはどうするか。

これは、レンズの近くに手をかざす(ハレ切り)、ちょっと立ち位置を変える、ピント位置を変えるなどするだけで色収差を回避できる場合があります。また、完璧に補正できるわけではありませんが、「階調とコントラスト」を調整したり、下の写真のように他のレンズを装着することで、色収差を軽減することができます。例えば、オリンパスの「TCON-17X」は色消しの作用が働くため、装着するだけで非常に素直な描写に変わります。
 

 

TCON-17X装着前

TCON-17X装着後

時雨
OM-D E-M1 + ZUIKO 135mm F3.5 + TCON-17X


懐かしい雰囲気の写真や映像を再現するために使用したり、工夫次第で最新型のレンズに匹敵する写りにすることもできる。これがオールドレンズによる撮影の面白さだと思います。そして、フォーカスピーキングやレンズ名登録などMF撮影の支援機能があるミラーレス一眼カメラは、オールドレンズの撮影をより豊かにしてくれるでしょう。



参考文献

 

 

更新履歴

  • 第1版:2015年4月18日15:35公開
  • 第2版:2023年4月6日更新。以下、情報が古くなったので履歴に移動しました。
色収差のある写真の修正は、色収差補正アプリが必要になります。最初に試したのはアドビの「Lightroom 5」で、「色収差を除去」を実行後、残った箇所を「フリンジ軽減」でスポイトでちくちく修正して、完全に消し去ることができました。おそるべしLightroom(修正した画像

Capture NX2シリーズとDarktableを試しましたが、ZUIKO AUTO-T 135mm F3.5の色収差を完全に消し去ることはできません。Darkableは、E-M5 Mark II 正式対応を謳っているので今後に期待です。

無料アプリの中ではGIMPのプラグイン「Purple Fringe Fix」(配布終了)が最も除去率が高いです。以下、ZUIKO 135mm F3.5の色収差を一発で除去できる魔法の設定です。*GIMP2.8.14のRAWファイル(ORF)の読み込みは画像が壊れてしまうので現時点ではJPEG限定です。



  • ZUIKO 135mm専用のお勧め設定は上から10, 1, −100, −100, -100, -100, Flatten Image: ON。Jpegに保存はFile/Save for Webです