2023年5月12日金曜日 更新:

1973年製造のオールドレンズのヘリコイドが最高な理由を探る

硬すぎず柔らかすぎず、ピント合わせが楽しくなるオールドレンズに出会った。

主な仕様

  • 画角:47°
  • レンズ構成6群7枚
  • 最短撮影距離:0.45m
  • フィルター径49mm
  • 最大径x全長φ60 x 39mm
  • 質量230g
     

 

基本情報

  • 製品名:オリンパス G.ZUIKO 50mm F1.4
  • 製造年:1973年5月(デートコードより)

 


外観

海の見えるリサイクルショップで、ジャンク品として売られていました。レンズ前群は黄変していて、照明にかざすと大量のカビが見える。数十秒思案したあと「買います」と店員に伝えた。

さっそく駐車場でLTII付きのOM-1に装着すると、最初は硬いと思っていたピントリングが、絶妙なトルク感で動き出すことに驚いた。

「おいおい、50年前だぞ。あのスカスカのレンズとは大違いだ。さすが、かつてのフラッグシップ用の標準レンズだ」

1970年代のモノコートレンズは、虹色のゴーストが盛大に出ると経験済み。レンズの近くに手をかざすだけで消えるものだが、逆光で撮るとやっぱり出るのねと。

OM SYSTEM OM-1 G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 at 1/5000 F1.0(LTII) ISO200 -0.7EV

OM SYSTEM OM-1 G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 at 1/5000 F1.0(LTII) ISO200 0EV


1週間後には、比較用としてOM-SYSTEM後期のマルチコート版の50mm F1.4を追加購入。デートコードを調べると、モノコート版が1973年5月、マルチコート版が1983年3月に製造されたものであることが分かった。

モノコート版のピントリングは、動き出しは硬いがすぐにヘリコイドがスッと軽くなる感触がクセになる。これは、残念なことにマルチコート版では得られないものです。 

 

新旧ヘリコイド比較

レンズを分解してみると、ヘリコイドに溢れるほどのグリスが塗られていた。1973年製の鏡胴に1983年製のヘリコイドを付けると、まったく一緒ではないが、心地よい感触を得られる事が分かった。


新旧を見比べると、1973年製の鏡胴は螺旋溝が金属仕様で、ヘリコイドの噛み合わせが良いのだろう。さらに中期のMC 50mm F1.4を入手したところ、鏡胴は金属製なのに、ピントリングを回し始めたときの ”もにょん” となる動きは無かった。
 
後日、気がついたらZUIKO AUTO-S 50mm F1.8についても初期、中期、後期の3本を揃えてしまったのだが、初期型のみ、G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4のピントリングと全く同じ動きをすることが分かった。
 
 

組み立て手順

1973年製のヘリコイドは、以下の手順で組み立てることができる。
  1. 鏡胴の底面を時計回りで止まるまで回す(無限遠の位置)
  2. 絞りをF16に合わせる
  3. 距離指標0.7mの位置に、ストッパーの溝を合わせる(F値のラベルがない方)
  4. 押し込みながら反時計回りにねじ込む
  5. ヘリコイドが止まるまで回す
  6. 少し戻して無限遠、F16、ストッパーの溝x2がすべて一致すれば成功
  7. 位置がずれたら3に戻る 


光学用ヘリコイドグリス

グリスは白色のタイプが採用されていたが、粘度の調整がこのレンズに完璧に合っていたのだろう。オリンパス系のネットの記事を纏めると、以下のようなことが述べられている。 

  1. グリスの量:薄く少量でOK
  2. グリスのチョウ度:レンズに合わせて以下を選択する
    • 候補1:トルクμN・m (25°C) 12700をベースに17600を好みで追加
    • 候補2:トルクμN・m (25°C) 17600をベースに56800を好みで追加


一般的には薄く少量でOKと言われているが、1973年製のレンズには白色のグリスが潤沢に塗られていたことに驚きました。グリスの硬さは、レンズ単体で触っているときは若干重く感じるが、実際にカメラに装着すると軽く感じるような絶妙な感触です。一体、どのグリスが使用されていたのか。

市場に流通しているオリンパス系の光学用のヘリコイドグリスは、オリンパス光学工業を退社した杉浦氏が1958年に創業した「杉浦研究所」製またはそのOEMと思われるものがあります。

 

トルク別の型名は以下の通りです。

トルク(チョウ度)

主な用途

SL

JHT

DP

12700(400)

ヘリコイド・ギア

S-10N

#10

n/a

13700

ヘリコイド・ギア

n/a

n/a

T-1

17600(370)

ヘリコイド・アリ

S-30N

#30

M-1

56800(260)

微動ネジ

S4-T500N

#500

M-2

 

商品のコメント欄など様々な意見から、候補1は相当軟らかい感触であることが予想されます。今回の「G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4」が候補1または候補2で調整されたと仮定して、JHTの#10とDPのM-1&M-2セットを購入してみました。

 


JHTの#10は、評判通りの滑らかさです。ここにディスカバーフォトのM-2を少し加えると「G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4」の感触に近づいた。ということは、T-1を購入すればよかったのかと言うとそう単純な話でもないようです。以下、ディスカバーフォトの解説を引用します。

  • Tは鉱油を主体としたグリスで、油性が特に優れており、ザラ、ゴリ、キシミ等の除去対策に抜群の効果を発揮します。MはT系グリスに合成油の特性を加味したもので、耐寒性能に優れています。寒冷地での使用頻度が高いものにお使いください
  • トルクの値が小さいほど耐寒性能が高く、トルクの値が大きいほどニジミは小さくなる傾向があります。グリスは性能に合わせて各種使い分けていただくのが最良の方法です」とのこと


 

まとめ

銀縁のOM標準レンズには、以下の特長があることが分かった。触れるたびに癖になるピントリングの “もにょん” とした初動の解明には至らなかったが、均一な動きをする現代のレンズからは得られない個性が感じられる。今後も写真撮影の相棒として、長く使い続けたいレンズだ。

  • 鏡胴のヘリコイドおよび螺旋溝が金属仕様である
  • 白色の高粘度ヘリコイドグリスが潤沢に塗布されている
  • ピントリングは回し始めに “もにょん” とした独特の初動を示す


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